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老人ホーム等に入居した場合でも小規模宅地等の特例を用いた相続税対策はできますか?

  • 文責:所長 税理士 田中浩登
  • 最終更新日:2023年9月6日

1 小規模宅地等の特例

被相続人が居住していた不動産についても、相続税の課税対象となります。

たとえば、被相続人が池袋に居住用の不動産をお持ちの場合、不動産の評価額はかなり大きくなることが予想されますので、多額の相続税が課税される可能性があります。

もっとも、一定の要件を満たした場合、被相続人が居住していた不動産については、土地の評価額を減額することで、相続税を軽減することができる特例があります

この特例を、小規模宅地等の特例と言います。

具体的には、被相続人が亡くなる直前まで居住していた不動産については、限度面積(330㎡)までは、土地の評価額を8割減額することができることとなっています。

限度面積があるものの、土地の評価額を8割減額することができるわけですから、課税される相続税は、大幅に減額される可能性があります。

このため、相続税申告にあたっては、税理士は、必ずと言っていいほど、小規模宅地等の特例を用いることができるかどうかをチェックします。

2 被相続人が老人ホーム等に入居していた場合(平成25年以前の相続の場合)

ところで、小規模宅地等の特例を用いるにあたっては、注意しなければならない点があります。

それは、基本的には、被相続人が亡くなる直前に居住していた不動産に限り、特例を適用することができるという点です。

逆に言えば、被相続人が過去に居住していたことがある不動産であっても、亡くなる直前には別の不動産に居住していたのであれば、小規模宅地等の特例を用いることはできないこととなります。

例えば、被相続人が治療のため入院していた場合について、入院自体は臨時にやむを得ずに行っているものです。

この場合、居住の本拠は自宅のままであったと言うことができますので、小規模宅地等の特例を用いることができます。

他方、被相続人が老人ホームへ入居した場合については、居住の本拠が老人ホームへ移ってしまうこととなります。

そのため、被相続人の自宅について小規模宅地等の特例を用いることができず、多額の相続税を納付する必要があることとなっていました。

3 被相続人が老人ホーム等に入居していた場合(平成26年以降の相続の場合)

とはいえ、老人ホームへの入居についても、生活上、やむを得ず行うものです。

この場合にも多額の相続税を納付しなければならないことになるのは、妥当性を欠いているとの問題提起がありました。

このため、平成26年以降に発生した相続については、一定の要件のもと、被相続人が老人ホームへ入居していた場合であっても、かつて被相続人が居住していた不動産について小規模宅地等の特例を用いることができることになりました。

その要件は、以下のとおりです。

  1. ① 被相続人が亡くなる直前に要支援認定・要介護認定を受けていたこと
  2. ② 被相続人が老人福祉法等に規定された老人ホームに入居していたこと

第一に、被相続人が要支援認定・要介護認定を受けていたことです。

被相続人の生前に要支援認定・要介護認定の申請が行われていた場合には、要支援認定・要介護認定がなされたとの通知が届く前に相続が発生したとしても、小規模宅地等の特例を用いることができます。

第二に、老人福祉法等に規定された老人ホームに入居していたことです。

いわゆる無認可の老人ホームに入居している場合には、小規模宅地等の特例を用いることができませんので、注意が必要です。

もっとも、上記の要件を満たす場合であっても、老人ホーム入居後、被相続人が居住していた自宅を、他の者の居住用または事業用に用いていた場合には、小規模宅地等の特例を用いることができなくなってしまいます。

ただし、老人ホームに入居する前に、被相続人と親族が同居しており、老人ホームに入居して以降も、同居親族が引き続き居住し続けている場合については、小規模宅地等の特例を用いることができます。

4 その他の要件

老人ホームに限った話ではありませんが、小規模宅地等の特例を用いる際には、他にも様々な要件を満たす必要があります。

第一に、居住用不動産を取得するのが、以下のいずれかの方である必要があります。

  1. ① 配偶者
  2. ② 被相続人と同居していた親族
  3. ③ 被相続人と別居していた親族(家なき子特例)※

※ただし、被相続人に配偶者と同居親族が存在せず、かつ、相続開始前3年以内に自分または配偶者が所有する家屋に居住したことがない場合に限る。すなわち、家なき子特例を用いることができるかどうかは、2次相続の場合に検討することになります。

第二に、相続税申告を行う必要があります。

特例を用いる前提として、小規模宅地等の特例を用いれば相続税が0円になる場合であっても、相続税申告を行っておく必要があります。

5 小規模宅地等の特例についてのご相談

このように、小規模宅地等の特例については、細かいルールが定められており、特例を用いることができるのかどうかの判断が難しい場合があります。

被相続人が池袋やその周辺に居住用不動産をお持ちだった場合は、小規模宅地等の特例を用いることができるかどうかによって、相続税の額が大きく異なってくることがありますので、特例を適用することができるかどうかについて、慎重に判断を行う必要があります。

小規模宅地等の特例を利用できるかどうかお悩みの際には、税理士に相談されることをおすすめします。

当法人は、池袋駅から徒歩3分の距離に事務所があります。

相続税や小規模宅地等の特例に関するご相談は、当法人までお気軽にお問い合わせください。

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